技術の泉

ゴムの初歩知識

ゴムと言えば・・・

突然ですが、『ゴムと言えば?』と聞かれて、大半の方が「輪ゴム」を連想するのではないでしょうか?
皆さんが抱いている『ゴム』のイメージは、
『よく伸びて、離すとパチンといって、急速に元にもどる』ですよね。

もちろん、自動車や自転車のタイヤ、エスカレーターの手摺り、皆さんが毎日履いている靴の靴底を連想される方もいるかもしれません。

実は、皆さんが生活する上で必要とするライフラインにも使用されていることをご存知でしたか?
例えば、道路だったり、上下水道だったり、はたまたオフィスビルや住宅、皆さんが今接続しているインターネットにも使用されているんです。

想像よりはるかに大活躍な『ゴム』は実に奥が深く、他の材料では決して得られない特別なものなのです。

ゴムの長~い歴史

まずは、ゴムの歴史から、勉強してみましょう。
ゴムの樹の樹皮を傷つけて分泌する液をラテックスと呼びます。このラテックスを固めて出来るのが生ゴム(天然ゴム)です。
1493年、コロンブスが航海の途中で生ゴムを固めたゴムボールで遊んでいる原住民を見つけた事が、ゴムの始まりだと言われています。

その後200年余りは、生ゴムのまま使用していたため、温度が上がると、ゴムが軟化してベトつき、温度が下がると硬くなるという欠点がありました。

最初の出会いから約350年後の1839年にアメリカ人のチャールズ=グッドイヤーがふとした偶然によりゴムの加硫方法を発見しました。加えられた硫黄を媒介とした分子間結合が新たに作り出され、ゴムの弾性と強度が飛躍的に向上しました。
この発見によりゴムの実用化が急速に進んだと言われています。偶然の発見がなければ、今日のゴムの可能性は広がらなかったのかもしれません。
さて、日本には、いつ頃ゴムが入ってきたのでしょう。

1854年、ペリーが将軍の献上用として持ってきた有線電信機のコードにゴムが使用されていたそうです。これが、加硫ゴムとしての日本初上陸と言えます。

今までの内容は、全て天然ゴム(加硫ゴム)のお話です。
ゴムの種類には、『合成ゴム』もあります。合成ゴムとは、簡単にいうと石油化学によって出来るゴムです。
天然ゴムとは違い、歴史は浅く、1930年代以降とも言われています。
第二次世界大戦中に日本が天然ゴムの原産国である東南アジア地区を占領していたため、アメリカは入手困難となった天然ゴムの代わりに国家管理のもとで合成ゴムを開発しました。
1955年には世界に輸出されるようになり、開発が増々盛んになり、汎用合成ゴム、特殊合成ゴムなどへ進化し、各種ゴム製品は私たちの暮らしに欠かせない物質になっています。

ゴムの特長

ゴムには非常に多くの特長がありますが、『柔らかくて、よく弾み、よく伸びて、離すと急速に元にもどる』 が一番の特長ではないでしょうか。
しかし、本性の解明に130年もの年月がかかったと言われるほどに、科学的にも特異な性質で、まさに不思議で神秘的ともいえる特性なのです。
現在では、用途、応用分野が多岐にわたり、また材料の種類が多く、ゴムを代替え出来る材料はないとまで、言われています。

ゴムの種類

主要なゴムの種類を紹介します。
※一般的には各種ゴムをブレンドして、用いるケースが多いです。

ゴムの種類 主な特長 一般的な用途
天然ゴム (NR) バランスの取れた物性があり、機械的強度に優れている。 タイヤ/ボール/ロール/防舷材
スチレンブタジエンゴム
(SBR)
天然ゴムに比べて、品質が均一。耐熱性、耐摩耗性に優れている。 タイヤ/ベルト/履物/ゴム引布/バッテリーケース
イソプレンゴム(IR) 天然ゴムと化学構造が全く同じで、物理的性質もほとんど同じ。異物がなく、品質が均一。 タイヤ/ベルト/履物/ホース/靴底
ブタジエンゴム(BR) 透明で低温特性、耐摩耗性、反撥弾性が優れている。動的特性が優れ、内部発熱が小さい。 タイヤ/ベルト/履物/ホース
クロロプレンゴム(CR) 耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、耐薬品性、難燃性に優れている。 ホース/ベルト/パッキン電線/ウェットスーツ
ブチルゴム(IIR) 耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐溶剤性、電気絶縁に優れている。気体の透過性が小さく、反撥性が小さいので衝撃吸収が大きい。 タイヤチューブ
ニトリルゴム(NBR) 耐油性、耐摩耗性、耐熱性、導電性に優れている。 パッキン/ダイヤフラム
エチレンプロピレンゴム
(EPM・EPDM)
耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐水蒸気性、耐溶剤性、耐薬品性に優れている。 ブレーキ部品/耐水用途
ハイパロン(CSM) 耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性に優れている。耐薬品性、耐熱性については、配合による差が大きい。 タンクライニング/屋外用引布/耐食性パッキン/耐熱耐食性ロール
ウレタンゴム(U) ポリエーテルタイプとポリエステルタイプの2種類がある。ポリエーテルタイプは耐水性に、ポリエステルタイプは耐油性に優れている。他のゴムに比べて機械的強度が非常に大きく、耐オゾン性、耐候性に優れている。 バンパー/パッキン/タイヤベルト/ホース/シール材
シリコンゴム(Q) 耐熱性、耐寒性、離型性、耐候性、耐オゾン性、電気絶縁性に優れている。 Oリング/ダイヤフラム/シール材/各種部品
フッ素ゴム(FKM) 耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性、耐候性などに優れている。 Oリング/ダイヤフラム/シール材

ゴム製品ができるまで

ゴム製品は大きく分けると、3つの工程に分けることが出来ます。
 

1.製品の用途及び使用条件に応じて原料ゴムを選択し、各種配合剤の種類および量を決定する
『配合工程』

 

2.配合に基づいて、原料ゴムと配合剤を混合・圧延・押出、コンパウンドを作り必要な形状に成形する
『加工工程』

 

3.成形された材料を、金型に入れプレス又は加硫缶などで熱を加え、ゴム弾性体とする
『加硫工程』

配 合




 
製品の用途、使用条件に応じて原料ゴムを選択し、各種配合剤の種類、量を決定していく。

【主な配合剤】

・補強剤…硬さ・引張り強さ、耐摩耗性などを高める為に使用。

・充填剤…ゴムの性質だけでなく、加工性を改善したり、コストを下げる為に使用。

・軟化剤…ゴムに可塑性を与え、圧延・押出等の加工を改善する為に使用。

・加硫剤…硫黄でゴム分子を繋ぎ、粘性を弾性に変える為に使用。
(最後の工程である『加硫』で重要とされる。)

混合工程
・素練り
・混練り





 

【素練り】
天然ゴムを使用する際に、絶対に必要な工程
天然ゴムは分子量が大きく、一定ではない。弾性が強いので、機械的なせん断力を与えると、分子及び分子間の切断によって、配合剤及び成形加工が容易になる。

 

【混練り】
(素練りされた)天然ゴム、合成ゴムに配合剤を均一に分散させる工程。
その後の加工の難易、ロスの多少、製品の品質を決定すると言っても過言ではないほど、基本工程の中で極めて重要な作業。

圧 延

【圧延】
2本以上のロールを備えた、カレンダーロール機を用いて、混練りした配合ゴムを均一な厚さ、所定の幅の長いシートにする。

成 形
・積層成形
・押出成形
・金型成形
・圧入式成形




 
ゴム配合物またはその他の材料を加工して最終製品に必要な寸法・形状を有する部品に組み立てること。

【成形方法】

・積層成形  圧延工程で製造された材料同士を貼り合わせたり、金属や繊維と貼り合わせて形を整える成形方法。

・押出成形  配合ゴムを押出機のスクリューの回転によって可塑化し、金型から連続的に押し出す成形方法。棒状・板状・中空状のものはもちろん、サッシュの様な異形のものも可能。

・金型成形  金型を使用して、製品の形状を成形する。

・圧入式成形 押出圧力によって配合ゴムを金型へ注入し、成形する。

加 硫
 
【加硫】
成形工程で出来たゴム製品に熱を加え、化学反応によって、ゴムの分子を硫黄で繋ぎ、ゴムの性質を変える。強度を増大させ、湿度変化による弾性の減少を防止し、溶剤に抵抗性を増大させる。
製品完成
社内検査
出 荷

さらっとゴムのお話をさせていただきましたが、少しでも頭の片隅に残ってくれたらなぁと思います。
ただ、まだまだ奥が深いんです、難しいんです、ゴムを理解するには。 何て言ったって…
「ゴムは奇妙な物質である」
と、有名な物理学者も言っているくらいですから…。

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